法学部出身でも何でもない自分が、自分用の憲法を作ってみた。

本文書(以下、「本憲法」という)を記述する者(以下「私」という)は、現在、仕事等により忙殺され、主に短期的な範囲での思考に限定されているところ、長期的には、私の将来の大きな決断等について検討する必要がある。一方、これまで私は26年間以上生存していく中で、ある程度統一的な判断等によって人生における大小の決断等を行ってきた経緯を踏まえ、今後も当該判断等によって、人生における決断等を行うことが望ましい。本憲法は、私がこれまで行ってきた判断等、それの根拠となる考え方及びこれまでの環境等を鑑み、私の人生における基本的な方針等の記述を行うことで、私の今後の決断等に資する目的として作成するものである。また、必要に応じて、私以外の生命体(以下「他者」という)に対しても公表し、私の方針等について、他者へ伝達する。


(収支について)
第1条 収支について、適宜精細に記録を行い、必要に応じて見直す。収支の記録は、「収支の記録に関するガイドライン」に基づいて行う。

2 収入については、私の趣向及び適正にふさわしい労働等を行うことで得る。必要な収入については、現在の支出、将来に必要な支出及び将来得られる予定の社会保険料等による収入等並びに債務等を鑑み、検討する。労働等を行う中で、私の趣向及び適正に必ずしも適合しないと判断した場合、労働等の変更等を行う。リスクを伴うことを前提として得る投資等については、リスクを勘案した上で、積極的に行う。

3 支出については、日常的には質素な額にて行うことを心がけるが、必要に応じて生活の水準を上昇することなどを目的として、多額の支出を行う。なお、当該支出については、不要でないか、簡単な検討を行った上で行う。


(飲食、睡眠並びに掃除等について)
第2条 飲食については、飲食を行う度に他者の生命を消滅等させることを前提としていることを念頭に置いて行う。調理について、可能な限り積極的に行う。外食等を行う場合は、材料等に関心を持って行うことを心がける。

2 睡眠については、日中の積極的な活動の根拠となるところ、毎日7時間半を確保することを心がける。当該確保が困難な場合、可能な限り近い日において、不足分を確保することを心がける。適切な睡眠等について、「労働・睡眠・ゆとり促進活動に関するガイドライン」を参照する。

3 掃除、片付け及び皿洗い等(以下「掃除等」)については、日々の生活の根拠になるところ、十分に定期的に行う。具体的には、床、風呂、トイレ及び流し台等の掃除、並びにテーブル及び流し台等の片付け及び皿洗い等などを行う必要があり、1週間に1度を目途に、各掃除等の必要性について検討した上で行う。


(結婚及び性的等行為について)
第3条 私は、一人の女性(以下「結婚予定者」という)と結婚する。結婚後に、離婚は行わない。結婚予定者を決定する際は、結婚予定者となる候補の者を十分に捜索し、私及び結婚予定者の適正、性格及び将来見込まれる収支を元に決定する。結婚を行う際は、将来の収支等計画を策定し、結婚予定者に開示する。当該計画は、結婚予定者と継続的に協議を行う。

2 性的等行為については、風俗等に依存しない形で、私の身体的欲望を一定程度満足させる水準で行う。なお、私の身体に支障が生じないこと、及び、結婚予定者となる候補の者との性的等行為が十分に行われることを前提とする。


(他者との関係について)
第4条 知人等との関係は、必要に応じて良好な関係を維持する。

2 社会については、多様な生命体によって構成されるものであり、他者の方針等を尊重し、必要に応じて社会の秩序を念頭に置いて行動する。

3 社会における役割等については、必要に応じて検討し、必要な知識等について取得等を行い、行動する。

4 宗教については、必要に応じて信仰する。なお、他者及び多くの国家等が宗教に基づき行動していることを、必要に応じ、鑑みて行動する。


(策定等について)
第5条 本憲法又はガイドラインが有効となった場合、私は本憲法又はガイドラインに基づいて行動する。

2 本憲法の策定、改訂若しくは廃止(以下「策定等」)を行う場合、策定等した日から起算して7日後の0時から有効となる。ガイドラインの策定等を行う場合、策定等した日から起算して3日後の0時から有効となる。

3 有効となる時点までに、記載内容について検討する。記載内容について修正が必要となった場合、修正した日から起算する。




========= 解 説 =========

(前文)日本国憲法にも前文があることを踏まえ、このような文章を書くことになった経緯、狙いを書いている。基本的にお硬い文章になると事務的な事項を淡々と書く傾向にあるが、ここでは少し気持ちの入った文章を書くようにした。
【「本憲法」という】「基本方針」や「統括的制度」など、他の名称案もあったが、「憲法」は全体的な基本方針とともに中央政府を規制するという特殊な性格があり、本憲法もその性格にふさわしい内容だと思ったので、この名称に合わせた。
【以下「私」という】「自分」などの表現もあるが、素直に自分のことを見つめなおして表現したいと思ったので、客観性のある文章の中で、あえて主観的な「私」という単語を混ぜて表現した。
【決断等】決断に加え、決定、選択など。転職やライフイベントなど、大きな人生の変更に関することを想定した用語として使用。
【判断等】決断等に資する思想、考え、思いなど。決断等よりも細かいスケールの意味で使用。
【方針等】憲法に記載している内容全般について。方針に加え、規制、目標など。
【私以外の生命体(以下「他者」という)】人間以外の動物や宇宙人なども含む。今後将来的に、人間以外の生命体と共存する可能性を鑑みて「生命体」という文言にしている。なお、「他者」はこのあとの条項にもたくさん出てくるが、細かい話をすると、生命体以外(土や地球など)は該当しないかという議論もあり、それについては現時点では未検討。

(第1条)第1条を何にするかということで検討したが、やはり人生において、金銭の収支が最も重要で、例えば後に出てくる労働等にも関わるし、三大欲求などといわれるものも、大概金銭の支出に依存する。これまで受けてきた教育についても各個人にふさわしい労働等を見つけるという性格であるし、会社でも、社風やCSRは重要だが、当然ながら株主総会などで主要な議論となるのは財務計画である。ただ、当然ながら第1条に記載する内容についてはこれからも検討し、必要に応じて修正することは可能である。
【記録】第1条第1項は、収支の記録と見直しである。これまで、帳簿の記録についてかなりこだわってやってきた私の性格に基づいて、「記録」についての記述を入れている。
ガイドライン】第5条を見るとわかるが、今の日本の法体系を真似して、憲法が修正しにくく、その下のガイドラインが修正しやすい構成としている。理由は、すべてカチッと規制してしまうと行動が縛られてしまうので、細かいけど規制しなきゃいけないようなことをガイドラインに書いておいて、後々頻繁に修正を入れていく、というようにしている。
【労働等】基本的には会社などで働いて賃金を得るというライフスタイルを想定し、現時点も実際そういう形であるが、当然ながら投資をして働かないで収入を得るという選択も可能だし、他人から寄付を受けて本人はボランティアをすることも可能性としては捨てていない。そういう意味の「等」。
社会保険料等による収入等】詳しくないが、医療保険や年金などそういう系の収入とか支出を「等」でまとめている。
【債務等】住宅ローンとかを念頭に置いてるが、他にも他人からの借金や、他人への借金などを含めて。
【労働等の変更等】転職に対して寛容な記述をしている。なお、先に述べたように投資で無職の可能性もあるので、変更だけでなくやめることも含めて「変更等」。
【投資等】投資信託、株、不動産投資はもちろんだが、預金の利息とかも含めたいので「等」をつけている。
【積極的に行う】もともと節約気味の性格なので、かなり強気の表現にして投資等を奨励している。
【質素な額にて行うことを心がけ】ここは性格的に言われなくてもやるので、ゆるい表現に留めている。
【多額の支出を行う】一方で、ちゃんと高水準の生活が必要なときはちゃんと支出してね、という意味で、「検討を行った上」で支出する。断定形。

(第2条)3大欲求のうち2つだけ。性欲は1個格下、というメッセージ。食欲が先に来るのは、単純に食の方が回数が多いためであり、それ以上の理由はない。
【他者の生命を消滅等させることを前提】「他者」はもちろん人間以外を指している。「消滅」というグロいワードを使ったが、本当にそういうことで、最近忘れがちなので戒めのために使っている。具体的には「いただきます」と言うなどの行動を行うことを念頭にした記載(具体的な内容が必要であれば別途ガイドラインを策定するなど対応が必要だが現時点では不要と考える)。消滅以外にも生命体以外を食している場合など多々可能性があるため「等」なのだが、「前提」という記載にとどまっているので、そこまで考える必要はないか。
【調理について、可能な限り積極的に行う】調理を奨励。
【外食等】コンビニ弁当、ホームヘルパーさんの調理などの家で食べる食事も含め。
【材料等】調理工程、仕入先とか。
【心がける】毎度義務づけるほど規制する気はないし、規制してもできない。
【毎日7時間半を確保することを心がける】基本的に平日は毎日6時間を切るぐらいしか寝ていないから、憲法上では7時間半を「心がけ」、充足しなかった場合は近い日に補うことを「心がける」規定にしている。目標達成は困難とはわかっているものの、やはり7時間半無いと十分に疲れが取れない実感があるので、記載はするが拘束力は無い状態にしている。
【労働・睡眠・ゆとり促進活動に関するガイドライン】帰ったら電気を暗くしたまま風呂を入れて出てすぐ寝るという規定。策定した当時はちゃんとやっていたが、最近は十分に遂行できていない。


(第3条)性欲や結婚に関して、既存のなんとなくの規制や基準があったが、それを明文化し、若干規制強化している。
【性的等行為】性的行為は、一般的に性交を意味するか定かではないが、それに準ずる行為や、そこまでじゃないけど似た性格の行為なども含めて、「性的等行為」としている。
【一人の女性と結婚】現状、私は男性で、私のことを男性と認知し、対象は女性、思想は一夫一妻制なので、そのとおりの記述としている。今後変更があった場合はその時に修正する。
【結婚後に、離婚は行わない】離婚するような事態になったら改訂する必要がある。
【適正、性格並びに将来見込まれる収支を元に決定】現時点で、結婚予定者を決定する条件はこの3つのみ。順番もこの順番が重要度順。一般的な婚活者の現在のトレンドはどんな感じだろうか。
【将来の収支等計画】収支計画のほか、家の場所、子どもの数など。
【結婚予定者に開示し、継続的に協議する】硬い言葉で書いているが、概ね普通の人が普通にやるようなことである。
【風俗等】AVやキャバクラに加え、セフレや出会い系も含めた表現として想定。
【依存しない形で】性欲を無理に規制するのは現実的でないため、禁止までは規定していない。ただ、現時点でAVに依存していないか、依存というのは頻度が指標か、そうであればどれぐらいの頻度が。この辺も含めて今後も議論になりそうなので引き続き検討する。
【身体的欲望を一定程度満足】ある程度満足したところでやめるよう促す記述。

(第4条)社会、人間関係などに関する規定。いろいろ記載しているが、新しいことは何もない。
【知人等】第1項はミクロな記載。知人に加え、電車の周りの人や街ですれ違う人などを想定。
【必要に応じて社会の秩序を念頭に置いて行動】ゴミのリサイクルに対する意識や、道路の速度規制など、「社会の秩序」を念頭に置くとすれば、必ずしも十分にできているとは言えない。「必要に応じて」規定にして、それ以上の水準については現時点では保留。
【社会における役割等】役割に加え、意義、立ち位置など。必要に応じて検討するが、「前提として行動」するなどのレベルは求めない。
【必要な知識等】知識、知恵、鍛錬、修行など。
【取得等】習得、学習など。自分の成長を怠ったらだめ、という意味で、一応断定しているのでそれなりに強制力を持つ(これに違反したからと言って、どこからが違反なのかについては判断が難しいとは思うが)。ただ、成長することというのは、結局は人間社会に役に立つためということに他ならず、社会の役割等のため、というような表現をわざわざ書いている。英語で自己啓発、とはいうが、それは社会を念頭にした「自己啓発」であり、必ずしも自己を念頭にした啓発とは言えない。自分に関する自分のための、もっと重要なことは、大体その前の条項に記載している。
【国家等】香港などの地域も含む。

(第5条)憲法ガイドラインの策定・改訂・廃止にかかる手続きについて記述。
【策定等】基本、何か決まり事を決めたり変えたりなくしたりするときは、会議や委員会などを開いて、多数の偉い人の意見を反映させて行うが、自分のための自分に対する意見は、慎重に考えたり、従順に従ったりする環境に乏しい。今回の「憲法」では、その懸念に対し、「時間」で対応している。要するに策定するのに時間が長いほど、違うかも、と思って修正する可能性があり、十分考えた規定に対しては、それなりに従う理由がある。憲法は長く、ガイドラインは短いという対応をすることで、差別化している。



========= 感 想 =========

自分のための憲法ということで作成を始めたが、結果的に誰の憲法でもいいような文章が出来上がった。思えば、企業が利益を上げるとか、お金がもらえる話、快楽を得られる話は、基本的には法令には書かないだろう。お金を稼ぎなさいとか、セックスをしなさいとか、そんなことはわざわざ書かなくてもそれをするインセンティブを持っている。
自分の憲法も同じで、趣味は〇〇だから続けなさいといえば、言われなくてもやるという話になるし、そもそも〇〇と固定してしまったら他の趣味を迫害するのか、という議論にもなりうる。
なお、今回は違反に関する議論を省いた。違反したからと言って自分にどのような規制が可能かなど、検討することが多く、現時点では検討する気もない。
もし、同じように憲法を作る人がいたら、例えば食べ過ぎるから食を抑制する文章を第1条として作るとか、セックスレスだからそっち方面を奨励するとか、微妙に順番や表現が変わるだけで、項目としては同じような話が来るのかもしれない。実際の法律でも、こんな風な細かい部分で駆け引きがあって、結果的にその微妙な表現が世の中に影響を与えるのかなと感じた。